92歳のおじいちゃま。
彼は私の勤める病院の患者である。
発熱・脱水で入ってきたのだが、もともと無口な性格
であることと、全身状態の低下により活気はなかった。
食事もとらず、言葉もあまり発することはなかった。
話しかけても、ちらっと見るくらいですぐに眠りにはいる。
そんなおじいちゃまを少しでも活気づけようと、車椅子に乗せ
てみた。ご飯も車椅子で食べさせることにした。
そして、沢山話しかけた。 反応の有無は関係なく、とにかく
話しかけてみた。
昨日の夜のおじいちゃまは、なんだかいつもと違った。
そう、車椅子に乗っておいしそうに自分でご飯を食べている
のだ。そして、私の声かけにも笑顔で答えてくれる。
明日、退院することになったおじいちゃま。
今日がおじいちゃまと逢える最後の日だったため、最後に
顔を見に行った。
「今日でお別れね。風邪ひかないでね。」と言うと、
笑顔で
「寂しくなるね。」
と言われた。
久々に思った。
「そう、私は看護師だった。そう、私はこの仕事が好きだったのよ。」
久々に若かりし頃の自分を思い出した。
もっと、患者さんに思いやりをもたなくてはいけないな。